派遣先で人前で怒られる、質問しても返事がなく仕事が止まる。「その年でこんなこともできないの」と言われても、契約更新が気になって相談をためらっていませんか。
パワハラかどうかを自分で断定してから、窓口へ行く必要はありません。まずは安全を確保し、何を言われたか、どんな状況だったか、仕事にどう影響したかを整理して伝えることから始められます。
この記事では、指導との違いを考える目安、記録の残し方、派遣元・派遣先への相談文例、対応が進まないときの公的な相談先を紹介します。今の職場で働き続けたい気持ちも含めて、次に何を伝えるかを一緒に整理していきましょう。
パワハラか断定できなくても、困っている言動は相談できる
相談の入り口で、法律に当てはまることを自分だけで証明する必要はありません。まずは「仕事をするうえで何に困っているか」を伝えましょう。定義は、自分のつらさを採点するためではなく、出来事を整理する手がかりとして使えます。

パワハラの3要素は「自分で認定するため」ではなく、状況を整理する目安
厚生労働省は、職場のパワハラを、立場などの優位性を背景とし、仕事に必要で妥当な範囲を超え、その結果として働く環境が害される言動と説明しています。この三つをすべて満たすものが定義に当たります。
ここでいう優位性は、役職や年齢の上下だけでは決まりません。仕事に欠かせない知識を持ち、その人の協力がなければ業務を進めにくい場合などは、同僚や年下の人との関係でも問題になり得ます。
たとえば、年下の指導担当者から質問のたびに侮辱的な言葉を返され、必要な確認ができなくなった、という仮の場面を考えてみてください。「相手が年下だから対象外」とは決めず、具体的な言葉と仕事への影響を伝えることが大切です。
窓口には、パワハラに当たるか微妙な場合も含め、広く相談に対応することが求められています。「当てはまるか分かりませんが困っています」という伝え方でかまいません。50代だから、派遣だからと遠慮する必要もありません。
注意の内容と、人格否定・無視などの言動を分けて見る
必要で妥当な業務上の指示や指導は、パワハラには当たりません。一方、ミスを注意される場面だったとしても、その場の言動をすべて受け入れなければならないわけではありません。
次の表は、相談内容を整理するための仮の例です。言葉だけで法的な結論を出す表ではありません。
| 仕事の修正についての話 | 分けて記録したい言動 |
|---|---|
| 入力を誤った箇所と、正しい処理方法の説明 | 人前で「その年でこんなこともできない」と言われた |
| 確認する手順や、質問先の指定 | 必要な質問をしても繰り返し返答がなく、処理が止まった |
厚生労働省は、人格を傷つける言動などの精神的な攻撃、仲間外しなどの人間関係からの切り離し、過大・過小な要求などを代表的な類型として示しています。ただし、類型に似ているだけで自動的に認定されるものではなく、目的、状況、関係性、頻度などを踏まえます。強い言動なら、一度でも問題となる場合があります。
「休憩中に一人で過ごした」ことと、「仕事に必要な連絡から外され業務ができない」ことも分けて考えましょう。修正すべき仕事の内容と、困っている言動を別々に書くと相談しやすくなります。
仕事の覚え方や質問の工夫を見直したい場合は、その問題を別に整理できます。ただし、自分の工夫をやり切ることが、相談の条件になるわけではありません。
仕事の覚え方や質問の工夫も整理したい場合は、こちらの記事で確認できます。
暴力や強い威圧があるときは、記録より安全を優先する
身の危険を感じるときは、証拠を集めるためにその場へとどまらないでください。安全な場所に移る、近くの人に助けを求めるなど、まず危険から離れることを優先しましょう。
たとえば、物を投げられた、出口をふさがれて強く威圧されたという場面では、録音や詳しいメモを取る余裕がなくても当然です。相手へ直接抗議することを先に済ませる必要もありません。落ち着ける場所から、派遣元や利用しやすい窓口へ状況を伝えてください。
記録は後から思い出せる範囲で残せます。眠れない、出勤することがひどくつらいなど、体調への影響が強いときは、医療機関などへの相談と、仕事上の調整の相談を分けて進めましょう。
ぶる太郎の見解
相談の準備は、自分をさらに追い込むための宿題ではないと思います。危険やつらさが強い日は、きれいな記録より、助けを求める連絡を先にしてよいのです。
相談の記録は「言われたこと・状況・影響」を分けて残す
記録は、出来事を窓口へ説明するための手がかりです。すべての証拠がそろうまで待つ必要はありません。自分のメモから始め、確かなことと、覚えていないことを分けて残しましょう。

日時・場所・相手・言動・周囲の状況を一件ずつ書く
一件ごとに、いつ、どこで、誰から、どのような場面で何をされたかを書きます。周りにいた人や、そのとき進めていた仕事も添えると、後で状況をたどりやすくなります。
厚生労働省の案内でも、日時、場所、言われた内容、相手、目撃した人などの整理を勧めています。最初から長い報告書にする必要はなく、次のような短いメモで始められます。
| 項目 | 記入例(実在の体験ではない仮の例) |
|---|---|
| 日時・場所 | 10月○日、15時ごろ、事務室 |
| 相手・場面 | 指導担当者。入力内容の修正を確認したとき |
| 言われたこと | 「その年でこんなこともできない」と言われた |
| 周囲の状況 | 同じ机の近くに社員が二人いた。聞いていたかは不明 |
| 仕事への影響 | 次の確認をためらい、処理を止めた |
| 自分の気持ち・体調 | 怖く感じた。その日の夕方から頭が重かった |
言葉を正確に覚えていればそのまま残し、うろ覚えなら「このような趣旨」と書きます。日付も「○日ごろ」、目撃者も「聞いていたか不明」でかまいません。後からつじつまを合わせず、不明な点は不明としておきましょう。
気持ちや体調は大切な情報ですが、出来事とは欄を分けます。「辞めさせるつもりだったはず」といった相手の意図の推測も、確認できた事実に混ぜないようにします。
繰り返されている場合は一件ずつ追記し、相談した日、相手、返事も同じ時系列に残してみてください。まずは最近の一件だけ、五分ほどで書き出すところからで十分です。
メールやチャットは前後の流れも残し、録音だけに頼らない
すでにあるメールや業務チャットは、日時や前後のやり取りも確認できる形で整理しましょう。一文だけでは、その前に何を質問し、どのような指示があったかが分かりにくいこともあるためです。
自分のメモに「○月○日の業務チャット、○時の発言」と記しておけば、出来事と資料を結びつけられます。内容を都合よく書き換えず、元のデータがどこにあるかも控えておくとよいでしょう。
ただし、会社の機密や顧客情報、ほかの人の個人情報を含む資料を、無断で大量に持ち出したり、SNSへ公開したりする方法は避けてください。会社の情報管理ルールを確認し、提出が必要なら窓口に安全な方法を尋ねましょう。
厚生労働省は記録の方法としてメモや録音などを挙げていますが、録音がなければ相談できないわけではありません。また、どんな録音でも適法で有効な証拠になると一律にはいえません。方法に迷う場合は、先に窓口へ相談する選択もあります。
資料がない部分は「メールはありません」「当日のメモだけあります」と伝えれば大丈夫です。ない資料を埋めようとするより、残っている情報と自分の記憶を区別して説明しましょう。
改善してほしいことと、共有への不安も整理する
出来事だけでなく、仕事を続けるために何を変えてほしいかも書いておくと、相談後の話し合いに役立ちます。処分を求めるかどうかを、最初から決めておく必要はありません。
たとえば「一対一で指導を受ける場面を減らしたい」「質問先を別の人にも設けてほしい」「必要な業務連絡が届くようにしてほしい」など、困る場面に対応する希望にしてみましょう。これらは相談するための例で、必ず実現するという意味ではありません。
「今の職場で働きたい」「更新が近く不安」「相手へ名前が伝わるのが怖い」という気持ちも、分けて伝えられます。希望がまとまらなければ、いちばん避けたい場面だけを挙げてもかまいません。
相談者などのプライバシーを守る措置は必要ですが、個別の事実確認には関係者への聞き取りが必要になることもあります。完全な匿名や、相手に絶対知られないことを当然の前提にせず、誰に何を伝える予定なのかを確認してください。
最初は「具体的な共有の前に、相談方法と進め方を教えてほしい」と伝える方法もあります。困り事を話すことと、共有への不安を話すことは、同時にしてよいのです。
派遣元・派遣先の窓口へ、事実と希望をセットで伝える
派遣先で起きたことでも、派遣元へ相談できます。派遣先の相談窓口も利用できます。いつもの担当者や上司に話しづらいときは、別の窓口を探し、利用できるところから連絡しましょう。

派遣元と派遣先の両方に、ハラスメントへ対応する役割がある
派遣元だけ、派遣先だけの問題と切り分ける必要はありません。厚生労働省の現行パンフレットでは、派遣労働者について、派遣元と派遣先の双方にハラスメント防止のための措置が必要とされています。
派遣元は雇用している会社、派遣先は日々の仕事の指示を受ける職場です。窓口の名称や連絡方法は会社によって異なりますが、候補は次のように整理できます。
| 連絡先の候補 | 最初に確認することの例 |
|---|---|
| 派遣元の担当者・ハラスメント相談窓口 | 就業先での出来事を相談できる担当、派遣先との連絡方法 |
| 派遣先の人事・ハラスメント相談窓口 | 派遣スタッフの利用方法、職場での対応や確認の進め方 |
これは、法的な役割を二つに限定する表ではありません。日常の担当者が相談相手として適切でない場合は、会社の案内や就業時の資料から専用窓口を確認してみてください。
言動の相手が上司なら、その上司を経由してからでなければ相談できない、と考える必要はありません。派遣元から先に、派遣先から先にという固定の順番もありません。双方で調整する場合は、自分への連絡役を誰にするかも尋ねておくと経過を追いやすくなります。
最初の連絡は「出来事・業務への影響・希望・共有の確認」でまとめる
最初のメールは、すべてを詳しく説明しきろうとせず、相談したい内容と面談の希望が伝わる長さにします。就業先、具体的な言動、仕事への影響、希望、共有について確認したいことを入れてみましょう。
以下は、状況に合わせて書き換えるための仮の文例です。
件名:就業中の言動と相談方法について
○○で就業中の○○です。パワハラに当たるかは分かりませんが、就業中の言動について相談したく連絡しました。
○月○日、入力内容を確認した際、指導担当者から周囲に人がいる場所で「その年でこんなこともできない」と言われました。その後、必要な質問をためらい、確認作業が止まることがあります。
今の職場で働き続けたいと考えていますが、質問や指導の受け方を調整できないか相談したいです。出来事のメモがありますので、個別にお話しできる時間をいただけますか。
相手への共有に不安があります。誰に、どの範囲を、どのように伝える予定か、具体的な共有の前に説明をお願いします。
文例の言動が実際になければ、そのまま使わず自分の出来事へ置き換えてください。回数や期間が分かる場合は添え、連絡を受けられる時間や方法も伝えます。
相手への謝罪や処分を強く要求しなければ相談として扱われない、ということはありません。「何に困り、どう働けるようにしたいか」を先に伝えると、窓口と次の対応を話し合いやすくなります。
相談した後は、担当・共有範囲・次の連絡日を確認する
相談をした後は、誰が対応し、どのように確認を進めるのかを押さえましょう。会社には、相談内容に応じた迅速で正確な事実確認や、関係者のプライバシーを守る措置などが求められています。
話し終えたら、次の点を質問し、分かった範囲をメモしておくと役立ちます。
- 今後の自分への連絡担当者は誰か
- 事実確認のため、誰にどの内容を共有する予定か
- 確認が終わるまで、指導や連絡方法を調整できるか
- 次はいつ、どの方法で連絡をもらえるか
次の連絡日を尋ねるのは、待つ間の見通しを作るための提案です。「相談から何日以内に必ず解決する」といった一律の期限があるという意味ではありません。日付が決められない場合は、状況を問い合わせる目安を相談してみましょう。
自分の希望どおりの配置や対応が難しいと言われたときは、理由と別の方法を確認します。「調整を依頼したこと」「実際に変わったこと」「まだ困っていること」を分けて残すと、再相談にもつながります。
対応が進まない・更新が心配なときは、経過を整理して相談先を広げる
窓口へ連絡しても、話が進んでいるか分からないことがあります。そこで待ち続けるしかないわけではありません。これまでの経過を整理し、社内の別窓口や公的な相談先を使うことも考えられます。

「対応待ち」が続くときは、未回答と新しい出来事を分けて再相談する
再相談では、最初の説明を繰り返すだけでなく、どこが未回答なのかを伝えましょう。「○日に相談した」「○日に確認すると返事があった」「その後の連絡はまだない」という経過があると、状況を共有しやすくなります。
たとえば、共有方法の説明をお願いしたのに回答がない場合は、「誰へどの内容が伝わっているか、現時点の状況を教えてください」と具体的に尋ねられます。連絡が取れなければ、専用窓口やほかの責任者へ相談する方法もあります。
一方、相談後に新しい言動が起きた場合は、前の相談記録とは別の一件として書き加えます。仮に業務連絡から外れたとしても、すぐに「相談への報復」と決めつけず、いつから、どの連絡が届かず、どんな支障があるかを伝えてください。
内部で話すことが怖い、取り合ってもらえないと感じる場合は、社内の手順をすべて終えてからでなくても外部へ相談できます。相談先を広げるためにも、これまでの連絡と返答を短く整理しておきましょう。
総合労働相談コーナーでは、パワハラなどの労働問題を相談できる
どこへ相談すればよいか迷うときは、総合労働相談コーナーが公的な入り口の一つになります。厚生労働省は、パワハラ、いじめ・嫌がらせ、雇止めなど幅広い労働問題を対象に、専門の相談員が電話または面談で対応すると案内しています。利用は無料で、予約は不要です。
連絡する際は、出来事のメモ、派遣元と派遣先の会社名、すでに相談した経過を手元に置くと説明しやすくなります。更新の話も含むなら、手元にある契約書などを確認できるようにしておくのも一案です。資料が全部なければ相談できない、ということではありません。
相談内容によっては、担当部署やほかの機関の案内を受けることがあります。一度の電話で解決したり、すべてのパワハラを労働基準監督署が認定・処罰したりする仕組みと考えず、使える制度や次の相談先を確認する場として利用しましょう。
所在地や開庁時間、連絡先は地域ごとに異なります。厚生労働省の「総合労働相談コーナーのご案内」から利用する窓口の情報を確認してください。「派遣先での言動と更新の不安を、どの窓口に相談すればよいか」という質問から始めてもかまいません。
相談を理由とする不利益取扱いの禁止と、個別の更新判断は分けて確認する
会社へ相談したことや、相談への対応に協力して事実を述べたことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。派遣元だけでなく、派遣先にも関係する大切な保護です。
ただし、この禁止は「相談すれば契約が必ず更新される」という保証ではありません。更新されないと言われた場合には、契約の種類や期間、説明された理由、相談との前後関係などを踏まえて個別に確認する必要があります。
「相談した直後に更新の話が変わった」と感じたら、相談した日、更新について説明された日、実際に言われた理由を記録して窓口へ伝えてください。記事だけで因果関係を決めず、不安な経過そのものを相談しましょう。
今の職場で働き続けるための調整と、派遣先を変えること、雇用契約の扱いは、それぞれ確認する話です。「年齢的に次がないから耐える」「すぐ辞めるしかない」と一つに決めず、選べる対応を尋ねてください。更新されないと言われた場合の確認事項は、契約更新に関する記事で詳しく整理しています。
よくある質問
働く場所や時間だけでは、相談できるかどうかは決まりません。ここでは、業務チャットと懇親会で迷いやすい点を補足します。
在宅勤務の業務チャットでの言動も相談できますか?
業務に関係する言動なら、在宅勤務中のチャットについても相談できます。職場は普段の事務所だけを指すものではありません。発言の日時、前後の指示ややり取り、仕事への影響を整理して伝えましょう。画面の一文だけでパワハラと断定せず、関係性や状況も説明してください。
勤務後の懇親会での言動は、勤務時間外だから対象外ですか?
勤務時間外でも、実質的に仕事の延長と考えられる場は「職場」に含まれる場合があります。仕事との関係、参加者、参加が強制だったか任意だったかなどを踏まえ、個別に判断されます。飲み会すべてが当たるわけでも、時間外だからすべて対象外になるわけでもありません。参加した経緯もメモして相談しましょう。
まとめ

50代の派遣で「パワハラかも」と感じたら、自分で認定する前でも相談できます。安全を優先し、言動・状況・仕事への影響を分けて残し、派遣元や派遣先の利用しやすい窓口へ伝えましょう。共有範囲と次の連絡予定を確認し、対応が進まなければ公的な相談先へ経過を持っていけます。
ぶる太郎の見解
「この職場で働きたい」という気持ちと、「この言い方はつらい」という気持ちは両方あってよいと思います。まずは最近の一件と、変えてほしいことを一つだけ書き出し、連絡できる窓口を一つ確認してみてください。危険やつらさが強いときは、書く前に助けを求めましょう。

