派遣元から無期雇用を提案されても、「正社員になるの?」「今の職場でずっと働けるの?」と、何が変わるのか迷うことがあります。長く働いている方なら、5年をいつから数えるのかも気になるところです。
50代の有期派遣も、要件を満たせば無期転換の対象になります。ただし、確認するのは派遣先で働いた年数だけではありません。派遣元との契約履歴と、転換後の働き方を分けて見る必要があります。
この記事では、無期雇用と正社員の違い、5年ルールの数え方、給与・待機・勤務地などの確認事項、相談から申込みまでの順序を整理します。契約書と照らし合わせながら読めば、自分が派遣元に何を聞けばよいかを絞れます。
無期雇用派遣で変わることと、変わらないこと
無期雇用派遣は、派遣元との雇用契約に期間の定めがない働き方です。契約の更新期限がなくなることと、勤務先や待遇が変わることは別に確認します。提案書では、会社名・契約期間・雇用区分を順に見ていきましょう。

有期派遣との違いは、派遣元との契約期間
派遣で雇用契約を結ぶ相手は、実際に仕事をする派遣先ではなく派遣元です。有期派遣では契約終了日が定められていますが、無期になると、その雇用契約に終了日を区切らなくなります。
たとえば、3か月ごとの更新で働いていた人が、派遣元から無期への変更を提案されたとします。この場合、最初に読むのは「今の派遣先でいつまで働くか」だけでなく、「派遣元との雇用契約がどのように変わるか」です。
無期になる入口には、法律の5年ルールによる転換のほか、会社が独自に設けた早期転換の制度などもあります。働き始めて5年未満だから提案がおかしい、というわけではありません。法定の申込権による手続なのか、会社独自の提案なのかを聞くと、確認すべき条件が分かれます。
手元の契約書で、雇用主の正式名称と契約期間の欄を確認してください。「無期」という説明だけで書面に開始日や適用条件が見当たらなければ、どの書類で確認できるか派遣元へ尋ねます。
正社員・同じ派遣先での勤務が約束されるとは限らない
無期転換は、原則として契約期間の定めをなくす仕組みです。派遣先の正社員になる手続とは異なり、派遣元でどの雇用区分になるかも会社の制度を確認する必要があります。
雇用が続くことと、同じ職場へ派遣され続けることも分けて考えます。派遣元との雇用契約が無期でも、派遣先との契約や配属の事情によって勤務先が変わることはあります。無期であっても定年などの終了事由がなくなるわけではなく、解雇には別途法的な制約があります。
| 期待していること | 提案時に聞く内容 |
|---|---|
| 更新のたびに雇用が切れる不安を減らしたい | 無期となる日、定年などの終了事由 |
| 今の職場で続けたい | 現在の派遣先での継続予定、配属変更の可能性 |
| 収入を見通せるようにしたい | 給与の決まり方、所定時間、待機中の扱い |
「安定したい」をこの3つに分けると、説明を聞いた後の判断がしやすくなります。今の職場を最優先にしたい場合は、その希望も別の質問として伝えてください。
50代で検討するときは定年と働ける範囲も確認する
期間の定めがなくても、定年の規定や、その後の再雇用条件は確認が必要です。何歳までどの条件で働く想定なのかが分からなければ、長く続ける見通しを立てにくいためです。
たとえば55歳で、数年後には介護のため勤務時間を短くしたいと考えている場合、現在の条件だけで判断すると後から希望が食い違うことがあります。将来の変更が必ず認められると考えず、相談できる制度や手順を聞いておきます。
- 定年年齢と、その後の継続雇用の条件
- 通勤可能な範囲と、勤務地が変わる可能性
- 仕事内容や勤務時間について外せない条件
60歳以上の派遣労働者が派遣期間制限の対象外となることは、無期転換とは別の制度です。3年ルールの例外だけを根拠に、自分の雇用契約も無期になると判断しないようにしてください。
ぶる太郎の見解
私なら、雇用を続けたい気持ちに加えて「この条件なら無理なく続けられる」を書き出します。名称への安心と、実際の生活に合うかどうかを一緒に確かめたいからです。
5年の無期転換ルールは、同じ派遣元との契約で数える
同じ派遣元との有期労働契約が更新され、通算で5年を超える契約になった場合、原則として無期転換を申し込む権利が生じます。年数だけでなく、契約の開始日・終了日と空白期間を並べて確認します。申込権が生じる日と、無期で働き始める日は分けて整理してください。

5年を超える契約を更新したら、契約期間中に申し込める
申込権の発生は、実際に働いた日数が5年を過ぎたかだけで決まるものではありません。同じ使用者との2つ以上の有期労働契約について、その契約期間を通算して5年を超える契約が対象になります。通算するのは、2013年4月1日以降に開始した契約です。
以下は、中断なく1年契約を更新した場合の仮想例です。
| 契約の時点 | 確認すること |
|---|---|
| 2021年4月1日 | 最初の1年契約が開始 |
| 2026年4月1日 | 6年目の1年契約へ更新し、申込権が発生 |
| 2026年4月1日〜2027年3月31日 | この契約期間中に無期転換を申し込む |
| 2027年4月1日 | 申込みをした場合、無期契約が開始 |
3年契約を更新して合計6年となる場合は、2つ目の3年契約の初日に申込権が発生します。実際に6年間働き終えるまで待つ、という数え方ではありません。
50代であることだけを理由に、この仕組みの対象外になるわけではありません。ただし法定の特例が適用される契約もあるため、自分の契約について確認します。派遣元には「申込権が生じる日・現在の満了日・無期契約の開始予定日」の3つを答えてもらうと整理できます。
派遣先が変わっても、派遣元が同じなら契約履歴を確認する
通算の基準は、同じ派遣先かどうかではなく、同じ派遣元と結んだ労働契約です。派遣先や部署、仕事内容が変わっても、それだけで契約期間がリセットされるものではありません。派遣元A社とB社での期間は、原則として別に扱います。
ただし、派遣会社へ登録していただけで雇用契約がなかった期間は、契約期間に含めません。同じ派遣元で2つの職場を経験した場合も、その間に雇用契約が続いていたのか、いったん終了していたのかを確認してください。
契約のない空白期間には、通算の扱いに関するルールがあります。空白前の通算契約期間が1年以上なら、空白が6か月以上ある場合、その前の契約期間は通算から除かれます。空白前が1年未満の場合には、より短い空白期間で除かれる基準があります。
「半年ほど休んだ」という記憶だけで決めず、契約終了日の翌日から次の契約開始日の前日までを日付で整理します。派遣の3年ルールの中断期間とは別の計算なので、派遣元には無期転換の通算について確認していると伝えてください。
申込み先は派遣元で、開始は今の有期契約が終わる翌日
法律のルールでは、5年を超えれば自動的に無期になるのではなく、本人の申込みが必要です。要件を満たして申し込むと、派遣元はこれを拒めず、現在の有期契約が終わる翌日から始まる無期契約が成立します。会社独自に自動転換する制度がある場合は、その運用も確認します。
申込みは、申込権のある有期契約の期間中に行います。口頭でも有効ですが、後で申込みの有無や日付を確認できるよう、書面で残す方法が勧められています。
- 所定の申込書があるか、提出先はどこかを聞く
- 提出した書面の控えと、受領を確認できる記録を残す
- 無期契約の開始日と転換後の労働条件を確認する
2024年4月以降は、申込権が発生する更新のタイミングごとに、申込機会と無期転換後の労働条件の明示が必要になっています。説明がないときは書面を求めてください。「対象ですか」と質問したことと、正式に申し込んだことは区別し、提出後は受領の確認まで進めます。
提案を受けたら比べたい労働条件
無期への提案を受けたら、給与・待機・配属変更の条件を、現在の条件と横に並べて比較します。説明の印象だけで決めず、労働条件通知書や就業規則の該当箇所を確認してください。気になる点を未確認のまま残さないことが、判断の助けになります。

給与・賞与・退職金は、名前ではなく支給条件で比べる
無期転換によって、必ず給与が上がったり賞与が付いたりするわけではありません。法定の無期転換では、契約期間以外の労働条件は、別段の定めがない限り、直前の有期契約と同じになります。就業規則などに別の定めがある場合は、その内容を確認します。
時給と月給を比べるときには、働く時間や日数もそろえて見る必要があります。たとえば同じ時給が続く提案でも、所定の勤務時間が短くなれば、月の収入の見通しは変わります。月給になった場合も、何時間の勤務を前提とする額なのかを聞いておきます。
| 項目 | 比較するときの確認内容 |
|---|---|
| 基本給 | 時給・月給の区分、所定時間、改定の条件 |
| 賞与 | 有無、対象者、算定期間、支給要件 |
| 退職金 | 制度の有無、対象となる勤続期間、支給要件 |
| 手当 | 通勤などの支給条件、配属変更時の扱い |
「正社員と同じ扱いです」という説明だけでは、どの項目が同じなのか分かりません。どの雇用区分の規程が適用されるかを質問し、比較表の空欄を埋めていきます。手取り額は個人の控除等でも変わるため、額面の説明から決めつけないようにします。
派遣先が決まらない期間の仕事と賃金を確認する
無期雇用では、今の派遣先での就業が終わったことだけで、派遣元との雇用が当然に終わるわけではありません。次の派遣先が決まるまで、研修を受けるのか、派遣元の業務をするのか、休業になるのかを確認します。
たとえば次の配属まで2週間空く場合、「待機です」という説明だけでは、その期間に何をするのか、いくら支給されるのかが分かりません。出勤の要否、連絡を受ける時間帯、研修の予定、支給の根拠となる規程を質問してください。
使用者の責めに帰すべき事由による休業には、労働基準法26条の休業手当のルールがあります。ただし、待機という名称だけで給与が常に満額になる、又は一律に無給になると判断はできません。会社の規程や契約、休業に至る事情を分けて確かめる必要があります。
派遣先がないと言われて退職届の提出を求められた場合も、扱いが分からないまま手続を急がず、雇用の状況と会社の説明を記録してください。説明に疑問があれば、契約書と指示の記録を持って相談します。
勤務地・業務・勤務時間の変更範囲を文書で確かめる
長く働くためには、配属変更があっても生活と両立できる範囲かを確かめます。2024年4月からは、労働契約の締結や有期契約の更新時に、雇い入れ直後の就業場所・業務に加え、変更の範囲も明示するルールになっています。
「今はこの職場です」という説明と、「将来どこまで変更される契約か」は別です。別拠点への通勤や、業務の変更が想定されるなら、対象となる地域・仕事を文書で確認します。勤務時間や休日についても、今後の配属でどの程度変わる可能性があるのかを聞いてください。
たとえば、介護のため17時には帰宅したい人なら、「近隣の拠点は可能ですが、帰宅時刻が遅くなる配属は難しい」と、対応できる範囲を具体的に伝えます。希望の理由と、相談できる代替条件を分けると話が進めやすくなります。
配属の提案を断った場合の扱いは、契約や事情によって異なります。「断れば必ず辞めることになる」などと自己判断せず、会社の説明を確認してください。定年規定も含め、続けられる期間と働ける範囲の両方を見ます。
派遣元への相談から申込みまでの進め方
契約履歴と希望条件を準備すると、確認したいことを具体的に伝えられます。条件を相談する段階と、無期転換を申し込む段階を分け、やり取りを記録しましょう。回答が曖昧な部分は、資料をそろえて公的窓口へ相談できます。

契約履歴と希望条件をそろえて、派遣元へ確認する
質問は「契約期間」「転換後の条件」「手続」の3つに分けると、回答の抜けに気付きやすくなります。契約書・労働条件通知書・更新に関するメールを並べ、参照できる就業規則も確認します。
日付の分からない契約は、派遣元に履歴を確認してください。希望条件はすべてを同じ重さにせず、通勤や勤務時間など外せないものを先に書いておきます。
確認メールは、たとえば次のようにまとめられます。
「今後も継続して働くことを希望しています。私の契約履歴について、通算期間と無期転換の対象になる時期をご確認いただけますか。申込権が生じる日・申込みの手続と、転換後の労働条件、待機中の扱い、定年の規定が分かる資料もお願いします。回答をいただける時期を教えてください。」
これは確認のための文例であり、正式な無期転換申込書とは分けて使います。営業担当だけでは答えられない内容は、労務担当などの窓口を聞き、誰からいつ回答が来るかを控えます。電話で説明を受けた場合は、後で要点をメールにして認識を合わせる方法もあります。
5年未満の提案や、今回は申し込まない場合の条件も聞く
法定の申込権が生じる前でも、会社との合意で無期契約にすることは可能です。その提案に社内選考や独自の条件があるなら、法律の5年ルールとは分けて説明してもらいます。法定の申込権を行使する場面に、独自制度の選考条件をそのまま当てはめて考えないようにします。
たとえば就業3年目に提案された場合は、次の3点を確認できます。
- 会社独自の制度か、どの条件で対象となるのか
- いつまでに返答する必要があるのか
- 見送った場合、現在の有期契約と次の更新はどう扱われるのか
法定の申込権がある契約で今回は申し込まず、その後に有期契約を更新した場合は、新しい契約期間中にも申し込めるのが基本です。ただし、これが次の契約更新自体を保障するわけではありません。現在の満了日と会社の更新に関する説明は別に確認してください。
提案を断ったら直ちに解雇される、見送っても必ず今のまま続けられる、と一律に決めることはできません。返答期限と未確認事項を並べ、必要な資料を受け取ってから判断します。
説明が食い違うときは、記録を持って労働局へ相談する
通算期間の説明が合わない、申込みを受け付けてもらえない、無期転換に関連して雇止めを伝えられた、といった場合は、公的窓口で整理できます。記事の一般説明だけで、その契約の結論や違法性を決めつける必要はありません。
たとえば「うちには無期転換の制度がありません」と言われた場合は、会社の回答日時と内容、契約履歴、申込みをした記録を残します。会社独自の制度がないという話なのか、法定の申込権を含めた説明なのかを確認できる資料にします。
無期転換ルールの特別相談窓口は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に設けられています。制度の概要のほか、関連する雇止めや労働条件の引下げも相談対象です。派遣法上の雇用安定措置などが論点なら、労働局の需給調整担当に確認します。
相談時は、契約書・通知書、日付順の経過、会社への質問と回答を用意してください。「何が分からず、何を確かめたいか」を1つずつ書くと、窓口でも説明しやすくなります。雇止めを伝えられている場合は、満了後の仕事探しなども分けて整理しましょう。
まとめ|契約履歴と転換後の条件をそろえて判断しよう

50代の有期派遣も、要件を満たせば無期転換を申し込めます。判断の出発点は、同じ派遣元との契約履歴と、提案されている働き方の内容です。
- 契約の開始日・満了日・空白期間を並べる
- 申込権が生じる日と無期契約の開始予定日を聞く
- 給与・待機・変更範囲・定年を文書で比べる
- 条件確認と正式な申込みを分け、提出や回答の記録を残す
ぶる太郎の見解
私なら、無期という名称だけで決めず、確認表の空欄を埋めてから考えます。続けたい仕事と生活の条件が揃うかを見れば、派遣元へ相談したい点も絞れます。
今日できる最初の一歩は、手元の契約書を時系列で並べることです。そのうえで、通算期間・申込機会・転換後の条件を派遣元に問い合わせてみてください。
無期転換についてよくある疑問
60歳以上なら、5年を待たず必ず無期雇用になりますか?
自動的に無期雇用になるわけではありません。60歳以上の派遣労働者が派遣期間制限の対象外となることと、無期転換の仕組みは別です。定年後の継続雇用などには法定の特例もあるため、年齢だけで判断せず、自分の契約形態と特例の適用を派遣元へ確認してください。
派遣先を変えずに働きたい場合も、派遣元への無期転換で決まりますか?
無期転換だけでは、同じ派遣先で働き続けることは確定しません。派遣元との雇用契約と、派遣先での就業は分けて確認します。雇用を続けたい希望に加え、今の職場での継続をどの程度優先したいかを伝え、配属の見通しを相談してください。
