親の通院や退院の準備が重なると、「派遣の仕事を休んでよいのか」「もう辞めるしかないのか」と迷うことがあります。介護がいつまで続くか分からないだけに、担当者へ相談するタイミングも悩ましいところです。
ただ、派遣で働いているという理由だけで、介護のための制度がすべて対象外になるわけではありません。雇用契約と制度の条件を確かめ、短い休み、まとまった休業、勤務時間の調整を使い分ける余地があります。
この記事では、制度の違い、派遣元への伝え方、収入と介護体制の確認順を整理します。両立を保証するものではありませんが、退職を決める前に何を相談するかが分かります。
制度情報は2026年10月18日に確認しています。個別の適用は、派遣元や公的な相談窓口へ確認してください。
親の介護が始まったら、退職を決める前に必要な支援を整理する
介護と仕事の両立を考えるときは、親に必要な支援と、自分の勤務に影響する時間を分けてみてください。困る場面が具体的になると、休みが必要なのか、時間の調整で対応できるのかが見えます。派遣元への相談と、介護サービスの相談は並行して進められます。

自分が対応する時間と、サービス・家族に頼める時間を分ける
最初から、自分がすべての介護を担う前提にしなくて大丈夫です。通院の付き添い、夕方の見守り、買い物、役所の手続きでは、必要な時間も代わりを頼める相手も異なります。
たとえば、週1回午前の通院と、毎日の夕方の見守りが必要な場合を考えてみましょう。前者はその日の休みを調整する話ですが、後者は継続的なサービスや家族の分担を考える話です。まとめて「介護があるので働けない」と捉えると、使える手段まで狭めてしまいます。
紙やスマートフォンに、次の4点を書き出してみてください。
- 必要な支援は何か、誰が対応する予定か
- いつ、何時間ほど必要か、毎週なのか不定期なのか
- すぐ対応が必要か、日程を相談できるか
- 勤務と通勤の、どの時間に重なるか
介護保険サービスを利用できるか、どの支援が合うかは、親の状態や地域の体制によります。地域包括支援センターや、担当がいる場合はケアマネジャーに相談してください。厚生労働省も、サービスの利用や家族の分担を通じて、一人で抱え込まない両立を案内しています。
制度の申出は派遣元へ、現場調整は派遣先との連携も確認する
介護休暇や介護休業の制度について確認する相手は、雇用主である派遣元です。普段の仕事を指示する派遣先に休みの相談をしただけで、制度の申出まで済んだとは考えないでください。
まず派遣元の担当者に、介護の制度を扱う窓口、就業規則、必要な手続きの案内を依頼します。派遣先への連絡や引き継ぎは、派遣元と連携方法を確かめて進めると、話の食い違いを防ぎやすくなります。
2025年4月からは、介護に直面したと申し出た労働者に対し、事業主が制度や申出先などを個別に知らせ、利用の意向を確認することが義務となっています。制度名を自分で全部調べ終えていなくても、介護が始まったことと、仕事を続けるために相談したいことを伝えられます。
急な入院などで当日の出勤に影響する場合は、決められた欠勤・遅刻の連絡を先に行い、その後に正式な制度手続きを確認してください。緊急連絡と制度の申請は、分けて考えると整理できます。
介護休暇・介護休業・勤務時間の調整を使い分ける
介護の制度は、一度の相談ですべて同じように使えるものではありません。短時間の付き添い、まとまった準備期間、日々の時間不足では、確認する制度が違います。派遣という呼び名ではなく、対象家族の状態、自分の契約、労使協定などの条件に沿って確かめます。

| 困る場面 | 確認する制度 | 先に確認すること |
|---|---|---|
| 通院や手続きで短く休みたい | 介護休暇 | 残日数・取得単位・賃金の扱い |
| 退院後の生活体制を整える時間が必要 | 介護休業 | 契約条件・開始日・申出期限 |
| 継続的に勤務時間が合わない | 短時間勤務等の措置 | 派遣元の制度・利用条件・現場調整 |
短い付き添いや手続きは介護休暇の対象と取得単位を確認する
介護休暇は、年次有給休暇とは別の制度です。ただし、名前に「休暇」とあっても、法律上、有給にすることまでは求められていません。賃金が支払われるかは派遣元の規定を確認します。
法定の取得日数は、対象家族が1人なら1年度に5日、2人以上なら10日までです。親が2人いる場合にそれぞれ無制限に取れる制度ではありません。年度の区切りも会社に確認してください。特に定めがなければ4月1日から翌年3月31日です。
取得は1日単位または時間単位です。たとえば午前の通院付き添いなら、診察だけでなく自宅や病院への移動も含めて、必要な時間を伝えます。時間単位の取得が難しい業務について労使協定で対象外とされていても、1日単位では取得できます。
対象は、2週間以上にわたり常時介護が必要な状態にある対象家族の介護や世話です。対象家族には父母のほか、配偶者、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母が含まれます。日々雇用される人は対象外です。通院付き添いや介護サービスの手続きも利用場面になりますが、親の通院なら何でも自動的に該当する、という意味ではありません。
出典:厚生労働省「介護休暇」 / 出典:厚生労働省「育児・介護休業法」
2025年4月には、継続雇用6か月未満の人を労使協定で除外する仕組みが廃止されました。週の所定労働日数が2日以下の人を協定で除外する仕組みは残っています。「登録して半年未満だから無理」と自分で決めず、現在の条件で確認してください。
申出は口頭でも可能ですが、会社の様式があれば実務上の提出方法も聞いておきます。年次有給休暇も候補にする場合は、介護休暇との違いを確かめて選びましょう。
まとまった準備期間には介護休業の要件と期限を確認する
介護休業は、対象家族1人について通算93日まで、3回に分けて取得できる制度です。年度が変わるたびに93日へ戻るわけではありません。日々雇用される人は対象外です。
休業を考える際は、自分が介護をし続ける期間としてだけでなく、退院後のサービスを手配し、家族で役割を決める準備期間として捉えてみてください。厚生労働省も、仕事と介護を両立する体制づくりへの活用を勧めています。
希望する日から休むには、原則として開始予定日の2週間前までに、書面等で申し出ます。急な入院当日から必ず開始できる制度ではないため、直近の欠勤や休暇と、これからの休業予定を分けて派遣元へ相談します。
有期雇用の人は、申出時点で、休業開始予定日から93日経過後、さらに6か月を経過する日までに雇用契約が満了し、更新されないことが明らかでないことが必要です。契約書に終了日があるだけで即座に対象外とはせず、更新の見込みを含めて確認してください。
加えて、労使協定がある場合には、次の人が対象外となることがあります。
- 派遣元での継続雇用が1年未満の人
- 申出の日から93日以内に雇用関係が終わることが明らかな人
- 週の所定労働日数が2日以下の人
介護休暇の「6か月未満の除外廃止」と、介護休業の条件は別です。派遣先での就業期間だけで判断せず、派遣元との雇用契約書、更新の説明、休業希望日をそろえて確認しましょう。
日常的に時間が足りない場合は短時間勤務等の措置を確認する
毎日の終業時刻が介護サービスの終了に間に合わない場合は、休む制度だけでなく、勤務時間を調整する制度を確認します。
介護のための短時間勤務等の措置として、事業主は、短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤、介護サービス費用の助成等から1つ以上を設ける必要があります。すべての制度がそろっていて、その中から自由に選べるという意味ではありません。
利用できる措置は原則として、対象家族1人につき利用開始から連続する3年以上の期間に2回以上です。費用助成については1回とすることも可能です。日々雇用される人は対象外で、労使協定で継続雇用1年未満、週の所定労働日数2日以下の人が除外される場合もあるため、制度名だけでなく期間や対象条件を確かめます。
たとえば、終業を30分早めたいときは、「毎日30分必要なのか」「週2日だけなのか」を分けて伝えます。そのうえで派遣元の利用可能な制度と、派遣先での業務の引き継ぎや担当時間をすり合わせます。
なお、介護のためのテレワーク導入は2025年4月から事業主の努力義務となっていますが、希望すれば当然に在宅勤務へ変更できるという制度ではありません。業務内容や会社の運用を確認してください。
派遣元への相談は、希望時間・手続き・収入をセットで確認する
相談では事情を詳しく話すこと以上に、勤務への影響と確認したいことを具体化すると役立ちます。使える制度が分かっても、賃金や連絡方法が曖昧なままでは続け方を判断できません。事実、希望、質問の3つを準備しておきましょう。

相談文には介護の状況、勤務への影響、希望する対応を入れる
最初の連絡では、対象家族との続柄、必要な支援、希望する日や時間、働き続けたい意向を短くまとめます。今後の見通しが未確定なら、そのまま未確定と伝えて構いません。
診断内容や家庭の事情を、同僚全員へ広く知らせる必要はありません。正式な窓口に、判断に必要な資料と、派遣先へ共有する情報の範囲を確認してください。
相談を始めるための文例
「母の退院準備と介護サービスの調整が必要になりました。来月は平日に2日ほど対応する見込みで、その後の頻度は確認中です。仕事は継続したいと考えています。介護休暇や介護休業など、私の契約で利用できる制度、申出手続き、休む間の賃金の扱いを教えてください。派遣先への共有と日程調整を、どの窓口から進めるかも相談したいです。」
これは正式な申請書の代わりではなく、相談を始めるための文例です。日付が決まっているなら具体的に記入し、制度の案内を受けた後に必要な申出を行います。介護に直面した人への個別周知・意向確認には、制度だけでなく申出先や介護休業給付金の案内も含まれます。
休む権利と休んだ間の収入・給付を分けて確認する
休暇や休業を取得できることと、その間の収入が維持されることは別です。介護休暇を有給にする法律上の義務はなく、介護休業中も賃金支払いの法律上の義務はありません。会社独自の支払いがあるかを就業規則や給与担当に確認します。
出典:厚生労働省「よくあるお問い合わせ(労働者の方へ)」 / 出典:厚生労働省「よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)」
介護休業には、雇用保険の要件等を満たした場合の介護休業給付があります。ただし、取得した人全員への自動支給ではありません。短い休みの「介護休暇」に、この介護休業給付が支給されるわけでもありません。
自分が対象か、必要な資料は何か、いつ申請するか、入金はいつ頃になる見込みかを派遣元とハローワークへ確認してください。給付が入るまでの支払いに備え、次の項目を並べると家計を考えやすくなります。
- 家賃や住宅ローンなど、減らしにくい固定支出
- 休む日や短縮する時間による賃金の減少見込み
- 介護サービスや通院交通費などの自己負担
- 給付や会社支援の対象可否と入金見込み
たとえば、時給1,500円で4時間の短縮を月4回行い、その16時間分がすべて無給となるなら、額面の減少は1,500円×4時間×4回=24,000円です。これは手取りや給付額の計算ではありません。実際の賃金控除、税金、社会保険料の扱いは給与担当へ確認します。
合意した調整は、期間・連絡方法・見直し日まで記録する
相談が終わったら、「理解してもらえたか」だけでなく、何が決まり、何が未定なのかを残してください。介護は状況が変わるため、見直し方も決めておくと再相談しやすくなります。
| 項目 | 記録すること |
|---|---|
| 勤務・休み | 開始日、終了日、曜日、勤務時間 |
| 制度手続き | 使う制度、申出先、提出物、確認待ち事項 |
| 業務対応 | 引き継ぎ内容、派遣先への共有担当 |
| 急な変更 | 誰へ、何時までに、どの方法で連絡するか |
| 見直し | 次に状況を伝える日と、回答を確認する日 |
見直し日は法定の期限という意味ではなく、実務上の提案です。親の退院日やサービス開始日など、状況が見える時期を目安に相談できます。
口頭で話した場合も、「本日の相談では、この日程で手続きを進めると理解しています」と要点をメール等で確認しておくと安心です。拒否や未回答があれば理由と経緯を記録し、無断欠勤や退職を即決する前に、正式窓口や公的相談先へつなげましょう。
両立が難しいときは、相談先と働き方を段階的に見直す
派遣元への相談だけでは、介護サービスや給付まで一度に解決しないことがあります。仕事の制度、親の生活、収入の問題を分けて相談先を選んでください。制度利用を理由とした不利益な扱いが疑われる場合も、一人で結論を出さず、記録を持って相談できます。

介護サービスと労働制度で相談先を分ける
親の暮らしやサービスの調整は、親が住む地域の地域包括支援センターや自治体へ相談します。すでにケアマネジャーが担当しているなら、勤務時間や自分が対応しにくい時間も伝えましょう。利用できるサービスや地域の支援を一緒に検討する材料になります。
仕事の制度や給付は、次のように窓口を分けると話を進めやすくなります。
| 困りごと | 相談先 | 用意するもの |
|---|---|---|
| 休暇・休業の手続きや勤務調整 | 派遣元の担当者・制度窓口 | 契約書、希望日時のメモ |
| 親の生活や介護サービス | 地域包括支援センター・自治体・担当ケアマネジャー | 親の状態、困る時間のメモ |
| 制度を使えないと言われた・不利益な扱い | 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室) | 契約書、回答、相談履歴 |
| 介護休業給付の対象や申請 | ハローワーク | 雇用保険や休業予定の情報 |
窓口は厚生労働省の案内や自治体の公式ページから探せます。「全部決まってから相談する」必要はありません。今いちばん切迫している困りごとと、まだ分からない点を分けて伝えてください。
制度利用を理由とする雇止め等を疑う場合は記録して相談する
介護休業等の申出や取得を理由とする解雇、雇止めなどの不利益な扱いは禁止されています。派遣先についても、制度利用等を理由とする交替要求や受け入れ拒否など、不利益な扱いは禁止されています。
出典:厚生労働省「その他・相談窓口」 / 出典:神奈川労働局「神奈川労働局メールマガジンNo.174」
ただし、契約満了や不更新がすべて違法になるという意味ではありません。判断には、契約内容、更新の説明、実際の理由、発言の経緯などの確認が必要です。
たとえば「休業するなら更新しない」と言われた場合は、言われた日時、相手、できるだけ正確な発言内容、その前後の相談事項を残します。更新通知やメール、雇用契約書も保管し、都道府県労働局へ相談してください。自分だけで相手の発言の法的評価を確定する必要はありません。
契約更新の終了通知が現実に届いている場合は、制度の相談と並行して、終了日や説明内容も確認します。更新に関する詳しい確認順は関連記事にまとめています。
勤務条件の変更は、介護体制と生活費を確認して一条件ずつ検討する
制度を使っても時間が合わないときは、何を変えれば続けやすいかを一条件ずつ検討します。勤務日数、通勤距離、終業時刻、職種を一度にすべて変えると、何が負担を減らしたかも、どこまで収入が減るかも見えにくくなります。
たとえば通勤だけが大きな負担なら、職種を変える前に、勤務地や移動時間から相談する方法があります。ただし、希望に合う別の派遣先が紹介されるとは限りません。現在の雇用契約や、条件変更に必要な手続きも確認します。
判断するときは、サービスを利用できる時間、家族の代替対応、最低限必要な生活費に加え、自分の睡眠や休息も並べてください。現在の仕事で調整できるのか、別の条件の仕事を検討するのか、一時的な離職も含め支援を相談するのかで、準備が異なります。
心身の負担が強いときに、継続だけを優先する必要はありません。体調面は医療機関などにも相談し、介護と仕事の調整を一人で抱えないようにしてください。
まとめ:辞める前に、使える制度と続けられる条件を確認しよう
50代で派遣の仕事と親の介護を両立できるかは、介護の必要時間、雇用契約、使える制度、収入によって変わります。派遣だからと諦めるのではなく、自分の条件で確かめるところから始めてください。

- 短い付き添いの介護休暇と、まとまった介護休業は別の制度
- 制度の申出は派遣元へ、現場調整の連携方法も確認
- 休む間の賃金や給付は、取得条件と分けて確認
- 介護サービスと仕事の制度は、それぞれの窓口に相談
ぶる太郎の見解
我慢するか辞めるかの二択にせず、今週いちばん困る時間を1つ書いてみましょう。そのメモをもとに、派遣元へ制度窓口を問い合わせることが、続け方を考える最初の一歩になります。
よくある質問
親が遠方に住んでいても相談できますか?
相談できます。同居かどうかだけでなく、対象家族の状態や制度の要件で確認します。移動にかかる時間も派遣元へ伝えてください。ただし、すべての帰省が介護休暇の対象になるわけではありません。
出典:厚生労働省「介護休暇」 / 出典:厚生労働省「介護休業」
要介護認定がまだ出ていなくても相談してよいですか?
認定を待たずに相談して構いません。育児・介護休業法上の要介護状態と、介護保険の認定は同じ基準ではありません。取得判断に必要な状態や資料を、派遣元や労働局へ確認してください。
派遣会社に介護制度がないと言われたら諦めるしかありませんか?
法定要件を満たす場合、就業規則が未整備でも介護休業を申し出られます。正式な窓口で対象条件を確認し、利用できないという説明があれば理由を記録して労働局へ相談してください。誰にでも無条件に適用されるという意味ではありません。

ぶる太郎の見解
私なら、条件をすべて緩める前に「今は外せない条件」を2つほど書き出します。仕事を続けることも、自分の生活を守ることの一部です。その条件を材料に、派遣元と介護の窓口へ別々に相談してみてください。